労働判例〜賃金や賞与、退職金

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宅地売買契約の成約後、入金前に退職した場合、歩合給の請求権は認められるのか?

労働判例案内人

売買代金入金完了時に歩合給を支払う定めであっても、賃全体系上歩合給の比率が高い場合には、契約の成約に至る過程から、入金完了までの全労務に対する割合をもって請求ができるとされた事例
(昭和51.2.12 札幌地裁判決 H企画センター事件)

 

判決の要点

原告の退職前における宅地売買契約成約状況及びその後の入金状況

各証言、原告本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められる。
@原告は、被告会社社員として、昭和48年4月26日、Sとの問に宅地売買契約(代金292万5,000円)を成立させ、契約書を作成し、手付金58万5,000円を受領したが、税金対策上、契約締結日を同年9月24日とする旨合意した。
その後、8月20日、原告が退社したため、被告会社社員が9月24日付けの契約書を作成し、同月26日残金234万円を受領し、所有権移転登記を経由した。

 

A原告は、被告会社社員として、昭和48年7月27日、Mとの間に宅地売買契約(代金272万2,000円余)を成立させ、契約書を作成し、翌28日手付金10万円を含め82万2,000円余を受領した。
残金190万円は同年8月20日に支払われる予定であったが、支払いが延びた。
原告は、同日付けをもって退社したため、被告会社社員が原告に替わって契約事務を担当し、同年9月13日所有権移転登記を経由し、同年10月23日残金の支払いを受けた。

 

B原告は、被告会社社員として、昭和48年4月14日、Nとの間に宅地売買契約(代金734万5,000円余)を成立させ、契約書を作成し、同年7月31日までに224万5,000円金が支払われ、残金は同年8月31日に支払われる予定であったが、ローンの変更により支払いが延びた。
原告は8月20日付けで退社したため、被告会社社員がローン変更手続を担当し、同年10月19日所有権移転登記を経由させ、同年11月30日残金の支払いを受けた。

 

退職後の入金完了に対する歩合給請求権

1.被告会社の歩合給は、売買代金の入金完了時に当該代金の3%相当額を支払う定めであるが、原告は、売買契約成約後その代金入金前に退職した場合でも請求できると主張し、被告会社においては、在職を要件とし、支給しないのがむしろ慣行であるとして争うので、検討する。

 

2.先ず、歩合給といえどもその実質に鑑み、労働基準法上の賃金に該当するというべきであり、それが基本給との関係において賃金全体に対して影響を有するものと認められる場合には、雇用契約関係終了の理由如何にかかわらず、その時点において、本来これを調整する余地を残すものとみられるところであるから、かかる給与の構成下にある社員が、売買契約を締結させた後、その入金前に退職した場合にあっても、それを基礎として、後、他の社員により登記の完了、代金の入金を了するに至ったような場合には、特段の事情のない限り、退職社員によってなされた顧客の発見、交渉、現地案内、契約締結等の既になされた労務の提供という事実を、労働の対償としての賃金額に反映、評価するのが公平であり、従って、提供された労務が、その契約についての入金完了までに要する金労務に対する割合等に応じて、歩合給を請求することができるものと解するのが相当である。

 

原告が請求し得る賃金額

以上の観点からすれば、原告の基本給が1ヶ月4万円であって、歩合給への依存度が基本給をはるかに上回ることが認められるところであり、かつ、後に被告会社社員が原告の契約について入金完了に至らせていることは前示のとおりであるから、原告は、その退職に伴い歩合給を請求し得るところであって、前示認定事実によれば、原告の労務提供の割合等は、前記@の契約については8割、Aの契約については9割、前記Bの契約については8割と認めるのが相当である。


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