労働判例〜賃金や賞与、退職金

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職能給の場合には、降格や減給を定めた規定がなくても、降格・減給措置が認められるのか?

労働判例

職能資格や等級を見直し、資格・等級を引き下げる場合は、就業規同等に職能資格制度において降格・減給の可能性が根拠づけられる必要があるとされた事例
(平成10.7.17 東京地裁決定 A証券(第二次仮処分)事件)

 

決定の要点

職能給制度における資格等級引き下げ・減給の要件

1.被告会社の旧就業規則においては、「社員の給与については、別に定める給与システムによる。」という規定のみ存し、被告会社が従業員の職能給の減額を行える旨定めた就業規則や労働協約等が存在しなかったことは当事者間に争いがないところ、被告会社は旧就業規則の下における賃金制度が本件変動賃金制(能力評価制)であったと主張する。

 

2.確かに、被告会社における給与の内訳が、職能給とその他付加的給付等となっていることや証券業界における営業社員の場合、営業成績が昇級・昇格に反映されるのも当然なことから考えれば、被告会社の採用する賃金制度が厳格な意味での年功序列的なものではなく、各人の能力や実績に応じたものであることは窺える。

 

しかし、使用者が、従業員の職能資格等級を見直し、能力以上に格付けされていると認められる者の資格・等級を一方的に引き下げる措置を実施するに当たっては、それが労働契約において最も重要な労働条件としての賃金に直接影響を及ぼすことから、就業規則等における職能資格制度の定めにおいて、資格等級の見直しによる降格・減給の可能性が予定され、使用者にその権限が根拠付けられていることが必要である。

 

本件賃金制度は降格・減給を予定した変動賃金制か

1.先ず、被告会社においては、社員営業員と歩合外務員等の区別があり、社員営業員については歩合給部分のない固定給方式である。

 

そして、給与システム及び「平成5年度モデル給与他社比較」によれば、職能給は基本給と位置づけられている。

 

また、被告会社における実態についても、平成4年4月までは、昇級・昇格の速度に成績等による格差は生じていたものの、基本的には年功により昇級・昇格してきており、内勤の職員はもちろん、営業職員についても給与システムに基づく降格・減給の例は全くといってよいほどなく、原告らについても入社以来、平成4年5月まて降格・減給はなかったのである。

 

2.このことからすれば、旧就業規則下の被告会社の賃金制度は、昇格・昇級が年功的ではないとしても、さらに、降格や減給までを予定したものであるということはできない。

 

したがって、旧就業規則は本件変動値会則(能力評価制)を定めたものではなく、これにより降格や減給を根拠付けることはできない。


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