労働判例〜賃金や賞与、退職金

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等級号俸制を採用している場合、職種変更をすることにより、基本給の減額は認められるのか?

労働判例

本件雇用契約は職種限定契約ではなく、職名と等級号俸とは厳密には関達づけられておらず、職務の変更と基本給の変更とは、別個に合意・決定されてきたもので、本件減額措置は無効とされた事例
(平成11.11.26 東京地裁判決 東京Aクラブ事件)

 

判決の要点

基本給減額の経緯

1.A部長は、平成8年6月頃、原告に対し、電話交換業務を廃止するので、退職するか被告クラブ内の業務を選択するよう求めたところ、原告は同年7月頃、退職の意思のない旨を告げたので、A部長は、電話交換手と同じ3等級の職種であれば、経理等の事務、フロントデスク、セクレタリーと思う旨告げたところ、原告はこれを拒否し、ランドリーを希望したので、基本給が減額される旨を説明するとともに空きの有無を調査することとし、同年8月頃、ランドリーに空きがなく、清掃か洗い場しかない旨告げたところ、洗い場を希望すると述べ、A部長の基本給減額の説明には承諾できない旨述べた。

 

2.同年9月5日、A部長は原告に、基本給の減額を24ヶ月かけて徐々に減額し、最終的に15%減額することを伝え、原告はECに相談する旨告げた。

 

被告クラブは同年10月から減額を実施した。

 

ECとは、被告クラブの従業員会であり、正式な労働組合ではないが、労働条件、安全衛生、福利厚生、能力開発といった問題について被告クラブと定期的に協議してきた団体である。

 

3.本件雇用契約が職種限定契約か否かにつき当事者間に争いがあるが、職種限定契約とは認められず、異動・配転も予定された雇用契約といえるし、本件職種変更も雇用契約の範囲内というべきである。

 

減額措置の実施と意義の不申述

本件減額措置の実施後、原告が異議を止めた形跡はなく、被告クラブはこれにより原告の承諾があったと主張するが、当時原告はECに委ねたという意識を持っており、訴訟代理人にも相談していたことからすると、承諾の意思がなかったことは明らかであるし、そもそも、基本給の減額のような極めて重要な労働条件の変更について、明確に拒否しなかったといって、承諾したとみなすことはできない。

 

本件等級号俸制における職務変更による減額の可否

1.被告クラブは、就業規則の一部である基本給テーブルに等級号俸に応じた基本給が明示され、職種・職務をこれに当てはめることによって基本給が決定されるから、職種変更の同意に伴い就業規則の適用によって当然に基本給は変更されるものであるから、本件減額措置は有効であると主張する。

 

2.被告クラブは等級号俸制の導入以来、資料配付や説明をし従業員は基本給が等級号俸により決定されることを熟知していたと推認でき、職種変更に伴い基本給減額例が2例あることからすると、被告クラブとしては、原則として職種に応じて等級号俸を決定しようとしてきたことは窺える。

 

しかし、職種・職務と等級号俸を関連づけた文書の配付はなく、平成6年の説明会でもおおよその職種・職能と等級との関連図(各等級に1、2例の職種が示されているに過ぎない。)が示されたことはあるものの、80もの職名があって従業員には自己の等級号俸の位置づけが判然とせず、A部長も説明会で等級号俸と呼称、定義、職能とが関連付けられていないことを認めている。

 

3.これらのことからすると、被告クラブとしては、等級号俸制の導入以来、原則として職種・職務と等級号俸を関連付けて基本給を決定しようとしてきたことは窺えるものの、本件雇用契約は職種限定契約ではなく、厳密には全職名と等級号俸とは関連付けられておらず、また、従業員の受ける不利益を考慮したり、従業員との合意に基づいたりして等級号俸制を弾力的に運用してきたものというべきであり、職務の変更に伴い当然に変更された等級号俸を適用しているとはいえず、職種の変更と基本給の変更は別個に当該従業員との間で合意され、決定されてきたものといわざるを得ない。

 

したがって、本件減額措置は、就業規則の適用によるものであるから、有効であるとする被告クラブの主張は理由がない。


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