労働判例〜賃金や賞与、退職金

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タクシー乗務員を営業係へ配転できるのか?配転を拒否した場合、賃金請求権は認められるのか?

労働判例

乗務員の業務は限定業務であり、その意思を無視して別個の職務に配転すべき強度の合理性はなく、配転命令は無効であって、民法536条2項により賃金請求権を失わないとされた事例
(平成11.3.24 福岡地裁判決 Kタクシー事件)

 

判決の要点

配転無効と民法536条2項に基づく賃金請求権の存否

1.本件労働契約においては、原告の職種は「一般乗用旅客自動車運送事業用自動車の運転と付随する業務」に限定されていたものと解するのが相当である。

 

営業補助職の職務はタクシー乗務員の職務とは別の職務と解すべきであるから、本件配転は職務の限定を超えるものであり、労働者の同意なく一方的に使用者が配転を命ずることはできないものである。

 

2.もっとも、労働契約に職種限定が認められる場合でも配転を命じることに強い合理性が認められ、労働者の配転不同意が同意権の濫用と認められる場合は、同意がなくても配転命令が許される場合があり得ると解される。

 

そこで、上述の事情が認められるかについて検討する。
被告会社には、@ジャンボタクシー運行の増加、A営業係の不足、B乗務係の過剰という事情があったことが認められる。

 

しかしながら、原告の意思を無視してまで、配置転換を強行する程の必要性や営業補助に原告以外の余人をもっては代え難いという職務の特殊性はなく、本件命令に強い合理性があるとは認められない。

 

I部長は、原告に対し、賃金体系が異なるのにその十分な説明もしていないし、原告が妻と相談するから待ってくれと言っているのに、翌日から担当車を取り上げて、タクシー乗務を禁止していることが認められるが、この対応は性急であり、労使関係の信義則に反するといえるものである。

 

3.以上のとおり、本件には労働者に配置転換を命じることに強い合理性が認められるべき事情はなく、労働者が配転に同意しないことが同意権の濫用とはならないというべきである。

 

4.以上によれば、本件命令は無効であり、原告は被告会社の責に帰すべき事由により、タクシー乗務員として就労できなかったものであるから、民法536条2項により、反対給付としての賃金請求権を失わないものである。


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