労働判例〜賃金や賞与、退職金

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配転拒否による懲戒解雇が無効でも、配転命令自体が有効なら、賃金請求権は認められないのか?

労働判例

懲戒解雇が手続上無効とされても、配転命令自体は有効であるから、配転先での労務提供の意思が認められない以上、民法536条2項の適用の要件を欠き、賃金請求権を取得しないとされた事例
(平成12.2.18 東京地裁判決 S和事件)

 

判決の要点

解雇権の濫用の有無

1.本件懲戒解雇に至る経緯は前記(略)のようなものであるところ、原告らは本件配転命令を拒否していたとはいえ、話し合い等により納得すれば、配置転換に応ずる旨述べていたこと、原告らの採用の経緯に鑑みれば、原告らが本件配転命令に難色を示すのも無理からぬものがあること、仮にS労働組合が本件配転命今後に結成されたものであるとしても、本件配転命令は原告らの労働条件に関わるものであるから、被告会社はこの問題に関し団体交渉に応ずる義務があったにもかかわらず、これを拒否したものであって、労働組合法7条2号に該当する不当労働行為であるといわざるを得ない。

 

2.したがって、被告会社は、少なくとも、団体交渉の継続を約束した上で、就労開始日以降の業務部での就労を求めるべきであって、このような手続を経ることなく、就労開始日を待たずにされた本件懲戒解雇は、その余の手続の適正について論じるまでもなく、手続の適正を欠き、解雇権を濫用するものとして無効であるというべきである。

 

賃金請求権の存否

1.賃金は、労務提供に対する対価であるから、労働者は債務の本旨に従った労務の提供(就労)をしない限り賃金を請求し得ないのが原則である(民法624条1項)。

 

違法な解雇など使用者の貴に帰すべき事由によって労務の提供が不能となった場合には、労働者は賃金請求権を失わないが(民法536条2項本文)、同条項適用の前提としても、労働者が債務の本旨に従った労務の提供をする意思を有し、使用者が労務の提供を受領する旨申し出れば、労働者においてこれを提供できる状態にあることが必要であるというべきである。

 

2.これを本件についてみると、本件配転命令が有効であることは前示(略)のとおりであるから、債務の本旨に従った労務の提供とは、被告会社業務部有明物流センター業務一課における労務の提供であるところ、原告らが平成9年11月1日以降、同課で労務を提供する意思を有していなかったことは明らかである。

 

そうすると、本件は、民法536条2項本文適用の前提を欠くのであって、原告らは、同項以降の賃金請求権を有していないというべきである。


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