労働判例〜賃金や賞与、退職金

スポンサードリンク



労働組合委員長による割増賃金支払要求書の提出は、消滅時効の中断事由となるのか?

労働判例案内人

組合員の協議による委員長名の割増賃金支払要求書の提出により、会社に対する催告があったと認められ、その後6ヶ月以内の本訴提起によって、催告の時点で時効が中断しているとされた事例
(昭和58.5.27 大阪高裁判決 T観光控訴事件)

 

判決の要点

労働組合の結成と団体交渉の経緯

1.被告会社には昭和53年当時十数名の運転手が勤務していたが、労働組合結成の動きが起こり、同年7月29日結成大会においてT観光労働組合が結成され、原告ら運転手はいずれも組合員となり、執行委員長に原告O、副執行委員長に同K、書記長に同Mが選任され、組合規約も作成されて、同日執行委員長名で被告会社に対して組合結成通知書が交付された。

 

2.当該組合は、同月23日、原告らも出席して聞かれた第一回団体交渉において、割増賃金の算定方法の誤りを指摘し、その計算のやり直しと正当な算定方法による割増賃金と支給済額との差額、すなわち未払金の支払を要求した。

 

3.ところが、被告会社はその後も組合の前記要求に応じないため、原告らを合む組合員らは協議の結果、組合執行委員長名で被告会社に要求書を提出することになり、原告O(委員長)により昭和53年10月25日、組合執行委員長O名義の被告会社あての同日付け要求書を被告会社に提出した。

 

4.その後、組合と被告会社との団体交渉は決裂したため、原告らは昭和54年4月23日に本件未払割増賃金等の支払を求めて本訴を提起した。

 

新賃金体系の採用による未払割増賃金債務の承認の成否

被告会社は、昭和53年9月分から正当な算定方法に基づく新値全体系を採用しており、それが過去の未払割増賃金請求を意識した上のことと推認できるが、将来に向けての賃金体系の改正、算定方法の是正と過去の未払賃金債務の承認とは自ずから別個の問題であって、新値全体系の採用をもって直ちに過去の未払割増賃金債務の承認と同視するのは早計にすぎ、原告らの再抗弁も失当を免れない。

 

労働組合執行委員長による要求書提出の催告の効力

前記「労働組合の結成と団体交渉の経緯」で認定の事実関係によれば、組合執行委員長O名義の被告会社あての昭和53年10月25日付け要求書の提出によって、同日原告らの被告会社に対する本件未払割増賃金の支払催告があったものと認めるのが相当というべきところ、当該催告後6ヶ月以内に本訴請求がなされているから、当該催告のなされた昭和53年10月25日の時点で、本件未払割増賃金請求権についての消滅時効は中断しているものというべきである。

 

そうすると、当該催告の時点から2年遡って、昭和51年10月25日以降に弁済期の到来する同年同月分以降の未払割増賃金請求権については、未だ時効消滅しておらず、被告会社はその支払義務を免れることはできないというべきである。


スポンサードリンク