労働判例〜賃金や賞与、退職金

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賃金債権の相殺・相殺予約に関する労働者の同意は、どの程度の明確さを必要とするのか?

労働判例

大型免許取得後3年間の勤務を約して供与された免許取得費用と、賃金・退職金との相殺及び相殺予約が認められるための同意は、自由意思に基づくことが一義的に明確であることを要するとされた事例
(平成12.4.14 東京地裁判決 D実業事件)

 

判決の要点

被告会社主張の相殺予約の合意の存否

被告会社は、社用業務資格取得申請書の文言や当事者の合理的意思を根拠として、原告が支払うべき諸費用と被告会社が支払うべき退職時までの賃金及び退職金とを相殺することができる旨の合意が成立していると主張する。

 

しかし、前記文言上は、相殺予約の合意の成立が一義的に明確であるとはいえず、むしろ、その形式的文言から相殺予約の合意の成立を認めることは困難である。

 

労働基準法24条1項本文の趣旨と相殺・相殺予約が認められる同意について

1.労働基準法24条1項本文は、いわゆる賃金全額払いの原則を定めているところ、これは使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにして、その保護を図ろうとするものであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも合むものと解される。

 

2.もっとも、当該規定は、労働者の自由な意思に基づく同意を得てする相殺あるいはその予約まで禁止する趣旨ではないと解されるが、当該規定の趣旨からすれば、労働者の意思が一義的に明確でない場合に、安易に相殺あるいはその予約の合意の成立を認めることは許されないというべきである。

 

本件における相殺予約の不成立

1.本件認定事実の下においては、相殺によって処理することが労働者である原告にとって便宜であるということもできないから、相殺予約の合意の成立を認めることが原告の合理的意思に合致するということもできない。

 

2.以上の次第であるから、本件において、原告と被告会社との間に、相殺予約の合意が成立していると認めることはできない。

 

よって、被告会社が社用業務資格取得費用21万円を控除することには理由がないから、原告の平成10年4月分賃金17万円余と自己都合退職金19万円余のうち既払いの15万円金を控除した残額である21万円余が未払いであることになる。


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