労働判例〜賃金や賞与、退職金

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「円満退職を支給条件」とする規定は、どのように解すべきか?

労働判例

退職申出期間違反、退職不承認を理由とする退職金不支給につき、「円満退職を支給条件」とする規定は、「永年勤続功労抹消に値する不信行為があった場合に不支給」とする限度で有効とされた事例
(昭和59.7.25 大阪地裁判決 N高圧瓦斯工業事件)

 

判決の要点

円満退職を退職金支給要件とする就業規則条項の有効性

1.退職金を支給する場合につき就業規則15条において、「会社は、従業員が円満なる手続により退職するか、または死亡したときは退職金を支給する。退職金規定による。」と規定し、同規則13条で、「従業員が退職を希望するときは、1ヶ月前に退職願を所属上長を経て提出し、会社の承認を受けなければならない。但し役付者は2ヶ月前とする。」と規定し、同規則14条において業務の引継ぎに関する規定を定めていることが認められる。

 

2.しかしながら、
(1)退職金規定を合む給与規定は、退職金不支給につきその31条で「従業員が懲戒解雇等不都合な行為によって退職するときは、退職金を支払わないことがある。」と規定し、本件退職金規定は、不支給の場合を懲戒解雇あるいはそれに準ずるものに限定している。

 

(2)退職金は、就業規則に規定を置いて支給条件を明白にし、支払が使用者の義務とされている場合には、労働基準法所定の賃金に当たると解するのが相当であり、本件退職金は賃金に該当するといえる。

 

(3)そして、退職金が労働基準法所定の賃金に該当する場合には、懲戒解雇等円満退職でない場合には退職金を支給しない旨の規定があっても、これが労働者に永年勤続の功労を抹消してしまう程の不信行為があった場合についての規定ならば、その限度で有効と解するのが相当であり、そのような不信行為がなければ、退職金を支給しないことは許されないものというべきである。

 

そうすると、前記退職金規定31条及び就業規則15条の各規定は、労働者に永年勤続の功労を抹消してしまうほどの不信行為があった場合には退職金を支給しない旨の限度で有効であり、これを超える趣旨の特約としては無効と解するのが相当である。

 

(4)原告らが、就業規則15条所定の「円満な手続による退職」に該当しないとして、被告会社が主張する事由は、いずれも従業員の退職手続規定違反を論難するものに過ぎず、仮に、被告会社主張の事実が存するとしても、それが原告らの永年勤続の功労を抹消してしまうほどの不信行為に該当するとはいえないこと明らかである。


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