労働判例〜賃金や賞与、退職金

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退職金を不支給ないし減額することが認められる懲戒解雇事由とは、どのような事由なのか?

労働判例

退職金全額を喪失させる懲戒解雇事由とは、永年勤続功労を抹消する程の背信性を必要とするものであるとして、同業他社の取締役に就任した管理職の退職金について6割の減額を認めた事例
(昭和47.4.28 名古屋地裁判決 H運輸事件)

 

判決の要点

原告らの懲戒解雇該当性

原告らは、被告会社の取締役副社長であった訴外Aが同業新会社を設立するに当たり依頼を受け、取締役にしたもので、訴外新会社の経営には直接関与せず、被告会社の管理職等として稼働していたものであるが、訴外Aから経営につき意見を求められるなどしてその経営に関与する可能性も考えられ、被告会社の秘密保持などの諸点を考慮すると、原告らが被告会社の許諾なしに訴外新会社の取締役に就任することは、本件解雇当時訴外新会社の経営に直接関与していなかったとしても、被告会社の企業秩序を乱し、又は乱すおそれが大である
というべきであり、本件解雇は有効である。

 

また、懲戒解雇を予告解雇の手続を経てなすことは、許容されるところであるから、本件解雇は昭和43年11月9日に効力を生じ、同日限り原告らは従業員たる地位を失ったというべきである。

 

懲戒解雇を理由とする退職金の不支給・減額の許容性

1.懲戒解雇は、経営秩序違反を理由として、制裁の意味で通常解雇にみられる退職金の利益をその一部ないし全部について停止するものであり、被告会社の退職金規定7項は、「次の各号に該当し退職する者は、支給額を減額もしくは支給しない」と規定し、その4号に「懲戒解雇により解任されたもの」と規定している。

 

2.上述のような懲戒解雇における退職金支給についての制限規定は、退職金が功労報償的性格を有していることに由来するものと考えられる。

 

しかし退職金は、賃金の後払い的性格をも帯有しているから、この制限規定の具体的適用が就業規則上使用者の裁量に委ねられているとしても、労働基準法の諸規定やその精神に反せず、社会通念の許容する合理的な範囲でなされるべきものと考える。

 

3.この見地からすると、退職金の全額を失わせるに足りる懲戒解雇の事由とは、労働者に永年の勤続の功を抹消してしまう程の不信があったことを要し、労働基準法20条但書の即時解雇の事由より更に厳格に解すべきである。

 

そこで、原告両名の本件解雇に至るまでの原告らの所為は、原告らが16年余にわたり被告会社に勤続した功を一切抹殺するに足る程の不信行為とは言えないから、所定退職金額の6割を超えて没収することは許されないと解するのが相当である。


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