労働判例〜賃金や賞与、退職金

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退職金を不支給ないし減額することが認められる懲戒解雇事由とは、どのような事由か?

労働判例

退職金は功労報償的性格を有し、就業規則で懲戒解雇時の不支給・減額を定め得るが、その適用に当たっては、勤続功労を抹消又は減殺するほどに著しく不信義な行為に限られるとされた事例
(平成9.2.14 大阪地裁判決 T吉ほか事件)

 

判決の要点

事件の概要

本件は原告会社が被告労働者に貸金の返済を訴求し(本訴)、被告労働者が貸金返済債務については退職金請求権と相殺した旨主張し、その残額の支払を求めた(反訴)事案である。

 

退職金規定における懲戒解雇事由に基づく退職金の不支給・減額条項の許容性

退職金は、多分に功労報償的性格を有するから、退職金規定において懲戒解雇事由がある場合に退職金の全部又は一部を支給しない旨を定めることも許されるが、退職金が一般に賃金の後払い的性格を有することに鑑みると、退職金を支給せず、又は減額することが許されるのは、従業員にその功労を抹消又は減殺するほどの著しく信義に反する行為があった場合に限られると解すべきである。

 

重大な背信行為の認定と退職金半減の相当性

1.被告労働者は、平成5年9月頃、販売マニュアルの手続を踏まず、原告会社に対しては直販である旨虚偽の報告をなし、Kファームに対して斡旋販売取引を開始し、同年11月頃から、従来からの顧客に虚偽の事実を述べてKファームを経由した取引とさせ、さらに別の6名の顧客についてもKファームを経由させる取引とし、その結果、原告会社の損失においてKファームに利得をさせ、上述顧客に対する売上金を一旦自己の銀行口座に入金させたこと、又、上司の承認が得られないことを自認しながら高額な進物をKファームに対して行い、複雑な帳簿処理を行って隠薮したことが認められる。

 

これら一連の行為は、原告会社の損失において第三者たるKファームを利得させ、又は自己の利益を図ったものであり、営業社員たる従業員として、原告会社に対する重大な背信行為に該当するといわざるを得ない。

 

2.もっとも、原告会社に生じた実損は8万円強に過ぎず、被告労働者は実損を全額賠償しており、一時的な売上金流用であってそれ以上に自己の利を図るものでなかったこと、勤続年数が21年に及ぶ中で前記背信行為は最後の1年強の期間に過ぎないこと等を効力すると、被告労働者の行為は、従前の功労を抹消するほど著しく信義に反する行為とまではいえないというべきである。

 

しかしながら、その功労を減殺するに足りる重大な行為であることは明らかであり、この観点からみるとき、退職金の半額を減ずることが、相当性を逸脱した違法なものとはいえないというべきであるから、原告会社による本件退職金減額措置は有効であると解すべきである。


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