労働判例〜賃金や賞与、退職金

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重大な背信行為の発覚前に自己退職した場合には、退職金の請求を拒めるのか?

労働判例

懲戒解雇の場合には退職金の支給を制限する規定であっても、自己退職後に永年勤続功労の抹殺に値する懲戒解雇事由が判明した場合には、退職金請求権の行使が権利の濫用に当たるとされた事例
(平成8.4.26 東京地裁判決 東京J事件)

 

判決の要点

給与規定及び退職年金規約における懲戒解雇に関する定め

給与規程32条及び退職年金規約33条は、従業員の退職金の支給を制限しているが、これらは、その制限をする前提として、「懲戒解雇した場合は」(給与規程32条)と規定し、あるいは、「懲戒解雇された場合は」(退職年金規約33条)と規定していて、いずれも被告会社が当該従業員を現に懲戒解雇していることを要件としているところ、原告は、被告会社から懲戒解雇されていないのであるから、上述各条項に該当するものではない。

 

懲戒解雇事由がある場合の自己退職後の退職金請求権の権利の濫用性

1.まず、被告会社の退職金の性格について検討する。

 

退職年金規約17条2項は、退職一時金の給付額は、勤続期間に応じ、退職時の基準給与に給付率を乗じた額とするとして、支給条件を一義的に明確に定めていることから、退職金の支給は使用者の義務とする趣旨であると解されること及び給与規程32条及び退職年金規約33条には、従業員が懲戒解雇された場合における退職金の支給制限規定が置かれていることからすれば、被告会社における退職金は基本的に賃金の性格を有し、付随的に功労報償的性格をも併せ有しているものと解される。

 

2.そして、退職金の性格が上述のとおりで、退職年金規約等に上述のような退職金不支給規定か置かれている会社において、従業員につき自己都合退職後に在職中懲戒解雇事由が存在していたことが判明した場合においては、当該懲戒解雇相当事由が当該従業員の永年の勤続の功労を抹殺してしまうほどの重大な背信行為である場合には、当該退職者が退職金請求権を行使することは、権利の濫用として許されなくなると解するのが相当である。


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