労働判例〜賃金や賞与、退職金

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労働判例

解約告知による退職後の退職金請求について、長年の勤続功労を抹消する程重大な背信行為に当たる懲戒解雇事由の存在を認め、請求権の濫用として支払請求を否認した事例
(平成13.1.26 大阪地裁判決 M社事件)

 

判決の要点

解約告知による退職と会社の懲戒解雇の主張の当否

原告が、被告会社に対し、平成9年5月末日で退職する旨の意思表示をしたことについては、当事者間に争いはない。

 

この原告の退職の意思表示は、少なくとも雇用契約の解約の意思表示足り得るものであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告に対するその後の懲戒解雇についての被告会社の主張は理由がない。

 

長年の功労を抹消する程の重大な背信行為の存在と退職金請求の権利の濫用性

被告会社の就業規則には、「懲戒解雇事由が存する場合の退職金不支給条項」は存在しないが、被告会社における退職金の金額は勤続年数と連動していることや、「懲戒解雇された場合の退職金不支給条項」の存在に照らせば、被告会社の退職金は、賃金としての性格のみならず、長年の勤続に対する功労報償的性格をも有するものといえる。

 

そして、懲戒解雇となった場合との均衡を考慮すれば、退職金が功労報償的性格を有するときには、当該従業員に在職中の長年の功労をも抹消する程の重大な背信行為たる懲戒解雇相当事由が存する場合には、当該従業員からの退職金の請求は、権利の濫用として許されないとするのが相当である。

 

本件における懲戒解雇事由の存在と退職金請求権行使の濫用性の認定

1.本件では、原告は、営業第3部部長としての地位を利用し、被告会社振出しの手形の裏付けのもと、数年にわたり、訴外Aをして本件口座に約8,500万円もの金員を振り込ませ、これを領得していたうえ、これが被告会社に判明しないように、伝票の書替えや帳簿への虚偽の記載を行っていたものであり、原告のこの行為による被告会社の正確な損害額は、被告会社の扱う商品が種類物であって、また、本件循環取引の他に正常取引が混在しているため正確には判明しないが、少なくとも架空の商品の買取金として約480万円の手形を振り出させていることや、本件口座への上述Aからの振込額が8,500万円に及んでいることなどからすれば、被告会社の現実の損害額は決して少なくないことが推認される。

 

2.かかる原告の行為は、被告会社の懲戒解雇事由に該当する。

 

そして、その長年にわたる功労をも抹消するに足りるだけの重大な背信行為であるといえる。

 

したがって、原告の被告会社に対する退職金の請求は、権利の濫用として許されないものといわざるを得ない。

 

よって、原告の被告会社に対する退職金請求は理由がない。


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