労働判例〜賃金や賞与、退職金

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「懲戒解雇者」を不支給対象と定めている場合には、自己退職者の請求を拒めるのか?

労働判例

懲戒解雇相当の行為があっても、「懲戒解雇者には退職金を支給しない」旨の規定である場合には、当該懲戒解雇相当行為の存在のみを理由に、退職金の支払を拒めないとされた事例
(平成2.7.27 広島地裁判決 H商事事件)

 

判決の要点

退職金の支払を拒否する会社の主張

被告会社は、「原告らは、被告会社を倒産させる目的で、昭和63年2月9日に到達した同月8日付けの書面で、同月9日をもって被告会社を退職する旨被告会社代表者に通知し、同月8目以降は、訴外Hフード企業組合の仕事に従事して、被告会社の業務を全くしなかった(なお、就業規則によれば、退職の効力が発生するのは、この書面の到達日から14日を経過した同月24日であるから、原告らは同月23日まで被告会社の従業員としての地位にある)。

 

原告らのかかる行為は、就業規則42条1号、3号、7号、8号、11号、13号に該当し、懲戒解雇に処せられるべき行為であるから、原告らには退職金請求権はない。」と主張している。

 

「懲戒解雇された者には退職金を支給しない」旨の規定を懲戒解雇事由に該当する者への適用の可否

1.退職金請求権が雇用契約から生ずる従業員の基本的な権利であることに鑑みると、その支払を拒めるのは、就業規則に定められた不支給事由が存在する場合に限定されると解するべきである。

 

しかるに、証拠によると、被告会社の就業規則には、「懲戒解雇された者」には退職金を支給しない旨の規定が置かれているが、「懲戒解雇に該当する事由がある者」には退職金を支給しない旨の規定は存在しないことが認められる。

 

2.そうすると、原告らの退職前の行為に、就業規則所定の懲戒解雇事由に該当する事由があったとしても、懲戒解雇の手続を取らないまま、当該事由が存在することのみを理由として退職金の支払を拒むことはできないと解すべきである。

 

なお、この手続をとったことについての主張立証はない。

 

仮に、本訴で懲戒解雇の意思表示をしたとしても、原告らの退職の意思表示が被告会社に到達しか日は、昭和63年2月9日であって、原告らと被告会社間の雇用関係は同月24日に終了しているから、その後に、懲戒解雇の意思表示をしたとしても、懲戒解雇の効力は生じない。


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