労働判例〜賃金や賞与、退職金

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懲戒解雇時に退職金不支給規定が存在しなくても、退職金を不支給にできるのか?

労働判例

就業規則の退職金不支給条項を懲戒解雇以前に有効に新設したとは認められず、当該不支給規定を根拠に退職金を不支給とすることは許されないとされた事例
(平成8.12.25 大阪地裁判決 Nコンペンションサービス事件)

 

判決の要点

原告らの退職の意思表示と被告会社の解雇の意思表示

原告らは、平成2年6月11日付けで被告会社に対し退職の意思を明らかにして、退職日として同年7月15日を指定し、被告会社は、同年7月11日に同月13日付けで解雇する旨意思表示をした。

 

原告らの懲戒解雇事由該当性

原告ら(原告Y他6名)は、被告会社を退社し被告会社と同種の事業を営む新会社を設立するため、関西支社、名古屋支店及び京都支店の従業員を勧誘して、平成2年6日25日被告K社を設立し、また、関西支社の書類や物品などを持ち出した点において、懲戒解雇事由に該当する。

 

退職金不支給条項新設前に解雇した場合における解雇を理由とする不支給の可否

1.被告会社は、平成2年5月30日、就業規則中に本件不支給条項を有効に新設したと主張するが、この点(人証)は、同日、本件不支給条項を新設したとしながら、現実に規程を周知させたのは平成2年7月末頃で、これを労働基準監督署に届出だのは同年7月頃であり、この新設に当たり労働者1名から意見を聴取したのみで、労働者の過半数を代表する者の意見を聴取していないと供述するところであって、本件不支給条項が平成2年5月30日に新設されたというには上述各手続の履践が相当に遅れており、また、その手続履践の程度も十分ではない上、これに同日に新設したとの裏付けが十分でないことをも考慮するとき、同日に本件不支給条項を新設したとの供述は措信し難く、他に被告会社の主張を認めるに足りる証拠はない。

 

2.したがって、本件不支給条項が平成2年5月30日に有効に新設されたということはできない。

 

その結果、本件不支給条項は原告らに本件解雇の意思表示をした平成2年7月11日以降に作成された可能性を否定することはできない。

 

したがって、被告会社が原告らに対してなした本件解雇が有効であるとしても、上述のとおり、本件不支給条項が本件解雇の意思表示を発する以前に有効に新設されたということができない以上、本件解雇を理由に、退職金を不支給とすることはその根拠を欠き、許されない。

 

以上、被告会社は、原告らの退職金を不支給とすることはできない。


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