労働判例〜賃金や賞与、退職金

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自己退職者に対して、「懲戒解雇事由のある者」の不支給規定を適用した事例はあるのか?

労働判例

自己退職者に対して、「懲戒解雇事由がある場合の退職」には退職金を支給しないとの規定に基づき、退職金の3分の2を減額した措置が適法とされた事例
(平成11.12.24 東京地裁判決 M証券事件)

 

判決の要点

原告労働者の退職の経緯と会社による退職金減額の理由

原告は、昭和52年4月被告会社と雇用契約を締結し、その後、平成7年4月に神楽坂支店副支店長となったが、顧客との間で紛争を生じ、副支店長を免ぜられ退職を勧奨され、平成9年12月30日、自己退職をした。

 

原告の退職金は、900万9,408円と算定されたが、被告会社は、原告には顧客の不当な過当勧誘や無断取引等の懲戒解雇事由があったとして、上述退職金額の3分の2を減額し、300万3,136円を退職金として支払った。

 

懲戒解雇該当事由の概要と退職金規程に基づく退職金減額措置の有効性

1.原告の顧客に対する説明、取引の勧誘、顧客に頻繁大量取引を行わせたことは不適切であり、この行為は証券取引法、被告会社の営業管理規則及び同営業員服務規程に反し、就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するというべきである。

 

また、無断取引を行ったことは否定できず、この行為は日本証券業協会制定の証券従業員に関する規則及び被告会社の営業管理規則に反するもので、就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するものといわざるを得ない。

 

さらに、特定の顧客名義の株式の売却、信用取引買い注文等を別の顧客に行わせたことの一連の行為は、証券会社の社員として許されない行為であり、就業規則所定条項に該当するといわざるを得ない。

 

2.上述によれば、原告の行為は懲戒解雇事由に該当するといわざるを得ず、そして、就業規則には、懲戒解雇の場合は原則として退職金を支給しないが、情状により減額支給する場合がある旨規定され、退職金規程には、懲戒解雇事由がある場合の退職について退職金を支給しないと規定されていることからすると、退職金規程は、懲戒解雇事由を原因とする退職についても退職金を減額支給する場合があることを合んで規定しているものと解するのが相当である。

 

よって、被告会社が退職金を減額支給したことは退職金規程に基づくものである。

 

3.もっとも、減額割合については特段の基準の定めがなく、被告会社の裁量に任されているというほかないが、その裁量の範囲を逸脱し原告の行為との均衡を欠く事情があるときは、その減額は許されないと解する余地もあるが、本件の行為は、各規定に反して顧客に重大な損害を与え、被告会社の信用を著しく失墜させるものであるから、被告会社の本件減額支給は正当であり、したがって、原告には退職金請求権は認められないものといわざるを得ない。


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