労働判例〜賃金や賞与、退職金

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退職金の不支給・減額規定には、どの程度の明確性が要求されるのか?

労働判例

退職金の不支給・減額事由を定める就業規則は、勤続功労を抹消(不支給)・減殺(減額)する程の著しく不信義な行為に適用され、不支給・減額条項には、一義的な明確性が要求されるとされた事例
(平成7.9.29 東京地裁判決 B社事件)

 

判決の要点

退職金の不支給・減額条項の要件

1.一般に退職金は、賃金としての性格の他に功労報償的性格も併せ有すると解され、在職中の功労を評価できない事由が存する場合に、退職金の支給を制限することも許され、退職金の不発生事由や一部不発生となる事由を明白に就業規則に定めておけば(就業規則の定められたこれらの事由を「制限条項」という)、それが労使間の労働契約の内容となるので、制限条項に該当する退職従業員については、退職金請求権がそもそも発生しなかったり、あるいは制限された範囲内で同請求権を取得することになると解される。

 

2.しかしながら、退職金が賃金たる性質を有することに鑑みれば、退職金請求権の発生をいかなる条件にかからせても許されるわけではなく、その条件は法及びその精神に反せず、社会通念の許容する範囲でのみ是認され、制限条項の適用は、労働者のそれまでの勤続の功労を抹消(全額不支給の場合)ないし減殺(一部不支給の場合)してしまうほどの、著しく信義に反する行為があった場合に限り許されるとするのが相当である。

 

3.従業員の退職後の行為を制限条項の内容とする場合も同様であり、この場合、退職従業員は退職に当たり、解除条件付きで退職金請求権を取得するものと解されるが、このような場合は、労働契約関係の解消により本来自由な退職従業員の行為の制限となることや、退職金金額が一度算定された後に適用される場合には、退職従業員の法的安定性を害する要因となることから、より厳格な条件の下でのみ適用を許すべきである。

 

4.さらに、制限条項の規定の仕方が抽象的であって一義的に理解できないような場合には、このことから直ちに条項を無効とすべきではないが、この条項が果たす規範役割は希薄なものでしかないのであるから、退職従業員を保護する見地から、その適用は一層厳格な条件の下で行うべきであり、背信性が極めて強い場合に限りその適用を許すのが妥当である。


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