労働判例〜賃金や賞与、退職金

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就業規則の退職届提出規定に反した場合には、退職金請求権は認められないのか?

労働判例

2月15日を退職日とする退職届を前月13日頃提出した場合について、3ヶ月の退職届の提出を義務づけた就業規則の定めに反するとしても、退職金請求を拒むことはできないとされた事例
(平成13.9.10 東京地裁判決 Pエンジニアリング事件)

 

判決の要点

関係規則の内容及び原告労働者の入社・退社の経過

1.被告会社の退職金規定には、「在職中の行為で、懲戒解雇に相当するものが発見されたときは、退職金を支給しない(8条)」旨の定めがあり、就業規則には、「自己都合退職をしようとするときは、あらかじめ部門責任者に相談し、双方合意のもとに退職届を提出する。勤続4年以上の者は、退職希望日の3ヶ月前までに退職届を提出する(30条1項)」旨の定めがある。

 

2.原告は、昭和62年12月17日、期間の定めなく被告会社に入社した。

 

本件退職当時の役職は、営業技術部長である。

 

原告は、平成11年1月13日頃、直属上司の営業部長に退職希望日を同年2月15日と記載した1月14日付け退職届を提出し、営業部長は同月14日出張中の被告会社代表者に報告した。

 

3.原告は、同月18日頃、被告会社代表者と面談し、退職の意向を伝えた。

 

原告は、同年2月24日までは通常どおり勤務し、同日の勤務終了後、同日限りで退職する旨の書面を置いて退出し、翌25日以降は出社していない。

 

なお、被告会社は退職を承認していないため、原告は引継ができなかった。

 

3ヶ月前までに退職届を提出すべき規定違反を理由とする退職金不支給の可否

期間の定めのない雇用契約においては、労働者は2週間の予告期間を置けばいつでも契約を解約できる(民法627条1項)。

 

原告は、平成11年1月13日頃、直属上司に同年2月15日を退職希望日とする退職届を提出し、同年1月18日にも被告会社代表者に直接退職の意向を伝えることにより解約を予告したから、同年2月24日(事実上の最終勤務日)限りで雇用契約は有効に終了する。

 

退職届を提出してから退職するまでの間に、原告の業務を後任者に引き継ぐことを困難とする事情を見出すことはできない。

 

そうすると、退職希望日の3ヶ月前までに退職届の提出を義務付ける就業規則の規定に原告が違反したことは、退職金の支給を拒む根拠にはならない。

 

また、原告が業務引継を行わなかったことの主な原因は、被告会社が原告の退職を承認していなかったことによるものであるから、原告の責に帰することはできない。


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