労働判例〜賃金や賞与、退職金

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退職の成立後に、懲戒解雇を理由に退職金を不支給にできるのか?

労働判例

退職金不支給事由の定めが「懲戒解雇」のみであり、退職成立後において、遡及してなされた懲戒解雇の意思表示は無効であり、退職金の支払を拒めないとされた事例
(平成9.10.24 東京地裁判決 Sランド事件)

 

判決の要点

原告の入退社と退職金請求権を否定する会社の主張

1.原告Tは、昭和48年1月S不動産に入社し、昭和62年5月被告会社に転籍し、平成8年2月末頃ないしは同年3月15日頃に雇用契約が終了するまで、両社を通じて23年2ヶ月間在職した。

 

被告会社は、原告Tにつき、関連会社に責任者として出向時における従業員の横領行為に係る監督責任について、「業務上の怠慢又は監督不行届」(就業規則47条4号)、あるいは「業務に関し重大な過失」(就業規則47粂7号)があり、懲戒解雇事由が存したと主張する。

 

2.そして、原告Tには上述の懲戒解雇事由が存し、被告会社において懲戒解雇手続をとっていないが、少なくとも内部的には懲戒解雇であるので、退職金請求権は存しないというべきであるし、、平成9年1月27日に、原告Tの従前の退職届受理を撤回して平成8年3月15日付けで、懲戒解雇する旨の意思表示をしたので、この点においても、原告Tの退職金請求権は存しない旨を主張した。

 

「懲戒解雇した従業員には退職金を支給しない」旨の規定のみ存する場合の支払拒否の可否

1.被告会社は、原告Tの退職金請求について懲戒解雇事由が存し、被告会社において原告Tの懲戒解雇手続をとっていないが、少なくとも内部的には懲戒解雇であるので、退職金を請求できないと主張するので判断する。

 

2.被告会社の従業員に適用される退職慰労金規程(2条)には、被告会社が懲戒解雇した従業員には退職金を支給しないことが規定されているのみで、これ以外の退職金不支給事由を規定していない。

 

原告Tは、平成8年2月15日頃、同年3月15日を希望退職日とする退職届を被告会社に提出しており、遅くとも同年3月15日までには、原告Tと被告会社との問の雇用契約は終了したものと認められ、被告会社においてこの間に、原告Tに対して内部的にではあれ、具体的な懲戒解雇事由を示した上で、退職届を受理しないこと及び懲戒解雇とすることを明確に通告し、原告Tもそのような手続がとられたことを了知していたと認めるに足りる証拠はないから、被告会社主張の事実が存することを理由に退職金の支払を拒むことはできないというべきである。

 

3.また、被告会社は、平成9年1月27日に、平成8年3月15日付けに遡って懲戒解雇をした旨の主張をするが、雇用契約終了後におけるこの意思表示は効力を生じないというべきであるから、この点に関する被告会社の主張も理由がない。


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