労働判例〜賃金や賞与、退職金

スポンサードリンク



自己退職の成立後に、懲戒解雇を理由に退職金を不支給にできるのか?

労働判例

自己退職成立後に懲戒解雇はできないが、「懲戒解雇者には退職金を支給しない」とする規定の趣旨を解釈することにより、不支給は不当ではないとされた事例
(平成11.1.29 大阪地裁判決 D社事件)

 

判決の要点

原告労働者の自己退職及び会社の懲戒解雇の通告

原告は、昭和48年3月、被告会社に雇用され、平成8年当時、物資三課の課長の職にあったが、被告会社は平成9年4月頃、原告に対し、営業部門から倉庫管理部門への配置転換を命じた。

 

原告は、平成9年5月末頃、被告会社に対し、同月末日をもって退職する旨の退職届をした。

 

これに対し、被告会社は、原告に対し、平成9年9月13日到達の内容証明郵便で、原告を同年6月30日付けで追って懲戒解雇する旨の通知をした。

 

退職後に背任行為を理由として遡及して懲戒解雇したとの会社の主張

1.原告には、被告会社が懲戒解雇事由として主張する背任行為(見積価格の1割高の価格で仕入れさせた行為外1件の背任行為)の存在が認められ、これらは、被告会社が懲戒解雇事由として主張する就業規則の各条に該当すると考えられる。

 

2.本件では、被告会社は、退職金不支給の根拠として、退職金規程3条1項が「背信行為など就業規則に反し懲戒処分により解雇する場合は退職金を支給しない」旨規定していることから、平成9年9月になって、原告を平成9年6月末日まで追って懲戒解雇したと主張し、これに対し、原告もまた懲戒解雇事由の存在を争って懲戒解雇の無効を主張しているところである。

 

雇用契約終了後の遡及懲戒解雇の可否

ところで、懲戒解雇は、懲戒権の行使であるとともに雇用関係終了事由であるが、原告が被告会社に対し、かねて同日で退職する意思を表明していたことは当事者間に争いがなく、被告会社もまた、同日をもって原告との雇用契約を終了させる意思であることは明らかであるから、原告・被告会社間の雇用関係は同日をもって終了したものというべきであり、その後に懲戒権を行使するということはあり得ない。

 

雇用契約終了後の懲戒解雇事由該当を理由とする退職金不支給の可否

1.しかし、本来、懲戒解雇事由と退職金不支給事由とは別個であるから、被告会社の退職金規程のように退職金不支給事由を懲戒解雇と関係させて規定している場合、その規定の趣旨は、現に従業員を懲戒解雇した場合のみならず、懲戒解雇の意思表示をする前に従業員からの解約告知等によって雇用契約が終了した場合でも、当該従業員に退職金不支給を相当とするような懲戒解雇事由が存した場合には、退職金を支給しないものであると解することは十分に可能である。

 

2.このような観点から本件をみると、原告の背任行為は、いずれも悪質かつ重大なものであって、被告会社に対する背信性の大きさからして、本来懲戒解雇に相当するのみならず、これを理由に退職金不支給とすることも不当ではないと考えられる。


スポンサードリンク

自己退職の成立後に、懲戒解雇を理由に退職金を不支給にできるのか?

従業員に対する企業の懲戒権は、何を根拠に認められるのか?
従業員に対する企業の懲戒権は、何を根拠に認められるのか?
懲戒権の行使は、どのようになされるべきか?
退職金を不支給ないし減額することが認められる懲戒解雇事由とは、どのような事由なのか?
退職金を不支給ないし減額することが認められる懲戒解雇事由とは、どのような事由か?
退職金の不支給・減額規定には、どの程度の明確性が要求されるのか?
懲戒解雇時に退職金不支給規定が存在しなくても、退職金を不支給にできるのか?
退職金不支給規定が、懲戒解雇時に周知されていない場合でも、不支給規定を適用できるのか?
懲戒解雇者に退職金を不支給とする規定は有効か?不支給規定がなくても不支給にできるのか?
「懲戒解雇者」を不支給対象と定めている場合には、自己退職者の請求を拒めるのか?
「懲戒解雇者」を不支給対象と定めている場合には、自己退職者の請求を拒めるのか?
自己退職者に対して、「懲戒解雇事由のある者」の不支給規定を適用した事例はあるのか?
退職の成立後に、懲戒解雇を理由に退職金を不支給にできるのか?
退職の成立後に、懲戒解雇を理由に退職金を不支給にできるのか?
重大な背信行為の発覚前に自己退職した場合には、退職金の請求を拒めるのか?
重大な背信行為の発覚前に自己退職した場合には、退職金の請求を拒めるのか?
金銭領得行為に隠蔽工作を施して自己退職した場合には、退職金の請求を拒めるのか?
退職金を支給済であっても、退職金不支給事由に該当する場合には、返還請求ができるのか?
「円満退職を支給条件」とする規定は、どのように解すべきか?
「円満退職を支給条件」とする規定は、どのように解すべきか?
「円満退職条項」違反があった場合でも、退職金請求権が認められた事例があるのか?
就業規則の退職届提出規定に反した場合には、退職金請求権は認められないのか?