労働判例〜賃金や賞与、退職金

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長期間立替えた社会保険料・所得税・地方税による退職金との相殺は有効と認められるのか?

労働判例

当該控除種目は、法令上のみならず就業規則上にも控除の根拠を有し、控除額も法令上明確であり、控除されることがあらかじめ認識されていたから、退職金債権との相殺は有効とされた事例
(平成6.7.25 東京地裁判決 医療法人社団J会事件)

 

判決の要点

社会保険料、所得税及び地方税の立替え納付

1.証拠によると、原告の昭和63年度分以降平成4年1月までの社会保険料、源泉徴収所得税及び地方税額は被告病院の主張のとおりであり、就業規則31条には「賃金は毎月末日に通貨をもって全額を直接本人に支給する。
ただし、次に掲げるものは支払の時に控除する。
@給与所得税、A地方税、B社会保険料、C食費」
と定められている。

 

2.そして、被告が原告に対して毎月発行していた給与支給明細書の控除額欄には、控除項目として健康保険料、厚生年金、雇用保険料、所得税及び住民税がそれぞれ控除金額とともに記載されていた。

 

被告は原告に対し、給与を支給するに際し、上述各種控除をした上でその支給をすべきであったが、この控除をすると原告が非常に不満を述べたので、この控除をしないまま支給し、この控除相当分は被告において原告のために立替払をしてきたこと、以上の事実が認められる。

 

社会保険料、所得税及び地方税の立替金と退職金との相殺の可否

1.原告は、被告が原告の当該立替払債務を免除した旨主張するが、被告が控除をしなかったのは上述認定した理由によるものであり、これを免除したと認めるに足りる証拠はない。

 

さらに原告は、被告の相殺の抗弁は労働基準法24条の法意に照らし、許されない旨主張する。

 

2.なるほど、本件退職金は給与規則で支給条件が予め明確に規定されているので、被告が当然にその支払義務を負っていることから労働基準法11条の労働の対価としての賃金に該当するということができる。

 

しかし、上述控除種目は、いずれも法令上のみならず就業規則上においても根拠を有し、その控除額も法令上明確であり、原告と被告との間において控除されることが予め認識されている本件にあっては、退職金債権と相殺することも許されるというべきである。


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