労働判例〜賃金や賞与、退職金

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賞与額の算定方法が長期間運用された場合でも、その算定方法に反して減額できるのか?

労働判例

夏季2ヶ月・冬季3ヶ月を基準とし、勤務成績・実績査定により加減決定する取扱いは、採用時に説明され、長期間の運用を経て労働契約内容となっており、理由のない減額はできないとされた事例
(平成11.10.29 大阪地裁判決 K会Y病院事件)

 

判決の要点

原告労働者の採用時の賞与の約定等及び給与規程の定め

1.原告は陳述書に、採用時に当時の事務長から口頭で、通常勤務者の夏季賞与は基本給の2ヶ月分、冬季賞与はその3ヶ月分を基本とし、これにプラスアルファを加算して支給すると聞かされていたと記載しているのに対し、証人Nは、賞与は職種や勤務態度の査定によって支給額が決定される旨供述するとともに、陳述書にも同旨を記載している。
2.給与規程には、
@賞与は通常年2回とし、夏季賞与は7月、冬季賞与は12月とし、変更がある場合は事前に報告する、
A夏季賞与の対象期間は前年11月16日から本年5月15日まで、冬季賞与の対象期間は本年5月16日から11月15日までとする、
旨の規定があるが、支給額やその算定基準、算定方法に関する定めはない。

 

原告労働者に対する支給実績とその評価

1.原告に支給されてきた賞与の基本給に対する比率は、証拠上次のとおりである。

昭和51昭和56昭和61平成1平成2平成3平成4平成5平成6平成7平成8
夏季
(倍)
2.22.32.32.42.62.61.72.22.22.21.5
冬季
(倍)
3.63.63.63.63.53.62.92.92.92.91.9

(注)8年につき、9万円を追加支給

 

2.上述認定事実によれば、平成3年までは夏季賞与につき基本給の2ヶ月分、冬季賞与につき同3ヶ月分という原告主張の支給基準を下図らず、その後も平成7年までは若干これを下回るにしても概ね同水準の支給がなされており、原告が採用時に説明を受けたという支給基準はあながち根拠のないものともいい難い。

 

3.他方、原告主張の支給基準が常に確保されてきたわけではなく、長期休業により無支給の例や、原告自身も平成4年の賞与が入院休職や事務次長辞退に対する査定として、減額査定のあることを認めていることなどからすると、原告主張の支給基準が保証されているとまでは認められない。

 

採用時説明及び運用実績による労働契約内容化と減額等の可否

1.以上によれば、夏季賞与基本給2ヶ月分、冬季賞与基本給3ヶ月分という算定方法により算出した額を基準とし、対象期間の勤務状況や実績等を査定して基準額を加減し、具体的な支給額を決定しているというべきであり、このような支給額算定方法は、事務長の説明や長期間の運用の実情を通じて雇用契約の内容となっていたと解される。

 

2.上述に照らすと、本件賞与は、単なる恩恵的な給付に留まらず、報奨的性質等を併せ有するとしても、基本的には対象期間の勤務に対する賃金の一部というべきであって、被告が正当な理由もなく上述の基準額を減額したり、不支給とすることは許されることではなく、そのような場合には、原告は上述基準額に相当する賞与の支払を求めることができるものと解される。


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