労働判例〜賃金や賞与、退職金

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労使合意に基づく賞与の支給実績がある場合、実績を根拠に賞与請求権が認められるのか?

労働判例

一時金の金額は労使協議の上決定する旨の合意に基づき、2年間賞与が支給され、3年目に会社が協議を拒否している場合に、過去の支給実績に基づく請求権が認められた事例
(平成6.2.18 浦和地裁判決 Aタクシー事件)

 

判決の要点

協定に基づき労使協議により支給額等が決定される賞与の権利性

1.被告会社と組合との間には、平成2年5月15日付け協定書において、平成2年4月以降一時金制度を新設し、夏季と冬季に年2回支給し、支給額は労使協議の上決定する旨の合意が明確に成立している上、支給について時期と決定の方法に関する合意文書が作成されている。

 

被告会社では、かねてより名目や原資に変遷があるものの夏季と冬季に一時金を支給する慣行が長く続いており、上述協定も従前の慣行を整理統合した性質のものである。
2.翌平成3年にも上述協定を前提として一時金の額を決定している。

 

また、同年には預け金による一時金制度も復活しているが、これは上述平成2年の協定に基づく一持金とは別個のものである。

 

平成2年と同3年の支給実績は、年額15万円と決定され、月例賃金に比べ比較的低額で一律であること等が認められる。

 

以上によれば、平成2年の協定に基づく一時金は、使用者の裁量により支給される恩恵的給付ではなく、労働の対価としての賃金の性格を有する給付と解するのが相当であるから、当該一時金は、労働協約又は労働慣行に準ずる効力のある上述協定により権利制を付与された給付というべきである。

 

使用者による労使協議の拒否と賞与請求権の発生

1.上述協定によれば、一時金の金額はその都度労使交渉で決定することになっているが、平成4年度分については、被告会社が協議を拒否しているため、具体的な金額の合意が成立していない。

 

2.しかし、上述認定事実によれば、平成2年度と翌3年度は労使交渉により年額15万円と決定された実績があり、その際、いずれも被告会社側から、15万円が最低額であり次年度からは増額する旨の発言が繰り返され、こうした発言もあって、労使は15万円で妥協したことが認められるから、この経緯と15万円という金額自体を斟酌すると、労使間においては、特段の事情の変更のない限り、当該一時金の年額は、15万円を下回らないものとする黙示の合意が成立していると認めるのが相当である。

 

使用者による本件一時金制度の一方的廃止の可否

本件一時金が恩恵的給付ではなく、労働の対価として労使間で規範化されたものであることは前記のとおりであって、被告会社は支払義務を負うものであるから、変更を要する場合には、その正当性を明らかにし、かつ、所定の法律上の手続を経て変更する必要があり、被告会社の一存で直ちに本件一時金の支払を拒否することはできないというべきである。


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