労働判例〜賃金や賞与、退職金

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労使交渉が未妥結の場合でも、会社の回答額で仮払いされた事例があるのか?

労働判例

労使交渉が妥結に至らなくても、直近の会社回答額で支払う旨の仮払い慣行が成立していたとして、会社の支払義務を認めた事例
(平成7.3.20 大阪地裁決定 T電気事件)

 

判決の要点

労使交渉未妥結時における仮払慣行の成立・・・支払義務の認定

1.労使の慣行が、法規範として効力を有するためには、単に反復継続しただけでなく、労使双方がその慣行に拘束されるとの規範意識を有するに至っていることが必要であり、本件のように一時金の支払に関する場合には、請求権発生の根拠となるべきものであるから、その支払時期や支払額等について、一義的に定められる内容を有するものであることが不可欠である。

 

2.昭和61年夏期一時金交渉に際し、被告会社は、従前と異なり2年分の一時金の決定をしたいとして相応する金額を回答したことから紛糾し、同年の夏期・冬期一時金とも妥結に至らなかったことを契機に、各一時金について協定が成立せず、係争中であっても被告会社はその意思で回答額と同額の支払をしたのを最初として、以後平成元年冬期一時金を除き、妥結に至らない段階でも組合との合意を前提とせず、その直近の回答に基づき支払を決定し、その支払をしてきた。(中略)

 

3.被告会社が一時金の仮払をしてきた期間は長期にわたっており、平成5年夏期・冬期一時金についても、平成元年冬期一時金のように支払拒絶をしないで、一方的に支払を決定して支払をしているものであるから、原告らも、一時金の交渉が妥結に至らない場合でも、被告会社が直近の回答額で支払をすることを確実視していることが認められる。

 

4.そうすると、原告らは一時金について妥結に至らない段階でも、被告会社の直近の回答の額や基準により支給されることと期待し得る立場に至っており、この取扱いはすでに労使の慣行として定着しており、原告らの期待利益は法的に保護するに値するものであって、支払額は被告会社の回答額によることとされ、支払時期は被告会社の決定や組合の要請の時から時日を経ていないことなどから、その内容も始期も明確であり、請求権として確定し得るものであること等からすると、この仮払慣行により原告らは、一時金の支払について、労使の協定が成立せず妥結していない段階でも、被告会社の回答した金額又は基準により算出した支払を請求する権利を有するというべきである。

 

5.そして、組合は、被告会社に対し、平成6年夏期一時金について同年10月24日に、冬期一時金について同年12月12日に仮払の要求をしたのであるから、被告会社は組合が要求したときは、原告らに対し、平成6年夏期と冬期一時金につき、被告会社が回答した金額や基準により算出した金額の仮払に応じる義務を負担しているものである。


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