労働判例〜賃金や賞与、退職金

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会社による賞与の査定が行われない場合でも、賞与請求権は認められるのか?

労働判例

査定により金額が確定する場合において、会社側が査定をしない以上賞与請求権は発生しないが、正当な事由のない査定不実施は、期待権の侵害として損害賠償が認められた事例
(平成10.12.10 東京高裁判決 T会S病院控訴事件)

 

判決の要点

査定により確定する賞与額の査定不実施と賞与請求権の発生

被告病院では、従前から一時金の支給決定について、協約や就業規則上は全額人事考課査定とされているが、実際には、勤怠のみが減額査定の対象とされ、欠勤・遅刻・早退のない者については平均支給率をもって一時金が支給されているものと推認される。

 

しかし、そうであったとしても、一時金の支給請求権は被告病院が人事考課査定をし、個々の支給額を決定して初めて発生するものと解するのが相当である。

 

一時金協定の有効性と査定・支給義務の存在

1.被告病院と組合とは、平成6年度年末一時金について、平成7年7月14日、
 @支給額は基本給の2ヶ月分とする
 A全額人事考課査定とする
 B支給日は同月21日とする
旨の協定を、また、平成7年度夏季一時金の支給について、同年7月8日、
 @支給額は基本給の1ヶ月分とする
 A全額人事考課査定とする
 B支給日は同月10日とする
旨の協定をそれぞれ締結している。

 

2.本件各協定は、労働組合法14条の労働協約の要件を具備した協定として、組合員である原告らに直接その効力を有するものであり(同法16条)、したがって、被告病院は原告らに対し、本件各協定に基づき、支給日までに人事考課査定をして具体的な一時金の支給額を決定し、支給日までに一時金を支給する義務を負うものといわなければならない。

 

人事考課査定の不実施と一時金の不支給による期待権の侵害

ところが、被告病院は、何ら正当な理由なくして前記各一時金支給の前提となる人事考課査定を実施せず、本件協定に定められた支給日までに一時金の支給額を決定し支給することをしなかったから、原告らは被告病院により、本件協定に基づき一時金の支給を受けるべき期待権を侵害されたというべきである。

 

期待権侵害による原告らが被った損害

1.被告病院では、一時金について全額人事考課査定の対象とされているが、実際には、勤怠のみが減額査定の事由とされるという運用が行われ、欠勤、遅刻、早退等で支給率が減じられる場合は格別、通常従業員は、平均支給率をもって一時金を支給されていることが認められる。

 

2.しかも、原告らは全員解雇され、本件各一時金の支給対象期間中被告病院により就労を拒絶され、全く就労できなかったが、この就労不能は、被告病院の貴に帰すべき事由であって、原告らが本件各一時金の支給対象期間中就労していなかったことは、一時金の減額査定の事由にはならないものと解するのが相当であるから、被告病院が特に原告らの不就労が被告病院の就労拒否とは無関係であることを立証しない限り、原告らは100%就労したものとして、本件各一時金の支給を受ける期特権を有しているというべきである。

 

3.したがって、原告らは、被告病院が本件各協定に定められた支給日までに人事考課査定をして、一時金の支給額を決定しなかった違法により、別紙(略)債権目録記載の損害を被ったものと認められる。


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