労働判例〜賃金や賞与、退職金

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賞与の支給日の直前に定年退職となった場合には、支給日在籍規定により不支給になるのか?

労働判例

対象期間勤務し、支給日前に定年退職した場合であっても、支給日在籍要件は受給資格者を明確な基準で確定する上で合理的であり、就業規則に明記されていることから、在籍規定が有効とされた事例
(平成8.10.29 東京地裁判決 K社事件)

 

判決の要点

原告労働者の主張

1.原告は、平成7年6月27日定年によって被告会社を退職した。

 

被告会社の給与規程によれば、夏期賞与の支給日は原則として7月第2週目の金曜日とし、支給対象期間は前年11月21日から当年5月20日までとするが、支給日現在在籍している者に支給すると定められている。

 

被告会社は、原告に対して夏期賞与を支給しなかった。

 

2.原告は、賞与は労働の対価として支払われるもので、月例賃金と性質が異なるものではなく、支給対象期間勤務していたから、本件賞与は全額支払われるべきであり、

 

@賞与は、年2回を標準に毎年決まって支給され、査定要素が少なくなり、一律支給的性格の極めて強い賃金となっており、年間所得の一部として重要性を帯びている

 

A支給日在籍要件は、支給対象期間の全部又は一部を勤務していたにもかかわらず、支給日の在籍者と不在籍者とを差別するもので、労基法1条の趣旨に反し無効である

 

と主張する。

 

賞与関係規定の内容と賞与の性格・・・月例賃金との性格の相違

1.被告会社の給与規程には、
@賞与は、社員の勤務成績と会社の目標成果達成に貢献する度合いを勘案して、支給する

 

A 賞与、その他臨時に手当を支給する場合の金額及び支給方法は、その都度定める

 

B賞与は、会社の営業成績により支給を停止することがある

 

C支給対象期間中に欠勤、又は不就業の場合は、勤務成績と業績貢献度を主とし、これに出動期間の長短を総合の上、賞与額を決定すると定められている。

 

2.これによれば、従業員の勤務成績と会社の業績に基づいて、支給するかどうか、支給するとして各従業員の支給額がその都度決定されるものであることが認められ、この点において、支給対象期間勤務することによって当然に発生する月例賃金とは性質を異にするといわざるを得ない。

 

したがって、支給対象期間を勤務したからといって、当然支給されるものと解することはできない。

 

支給日在籍要件の適法性

1.賞与の受給資格者につき支給日現在在籍していることを要件とするいわゆる支給日在籍要件は、受給資格者を明確な基準で確定する必要から定められるものであり、十分合理性があると認められる。

 

因みに一般職の国家公務員に支給される期末・勤勉手当も、基準日ないし基準日前1ヶ月以内に在職することを要件としている。

 

2.原告は、支給対象期間勤務しているにもかかわらず支給されないのは不合理であると主張するが、賞与の前記性質及び支給日在籍要件も給与規程に明記されていることからすれば、支給対象期間経過後、支給日の前日までに退職した者に不測の損害を与えるものとはいえないし、支給日在籍者と不在籍者との間に不当な差別を設けるものということもできない。

 

したがって、支給日在籍要件を定める就業規則等の規定は、労働基準法1条の趣旨等に反して無効であるとする原告の主張は採用し難い。

 

なお、今日、賞与は労働者の年間所得として生活維持に不可欠な重要なものとなっている旨主張するが、仮にそのような実態があるにしても、賞与の性質等に照らし以上の判断を左右しない。


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