労働判例〜賃金や賞与、退職金

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所定の支給日が遅延した場合でも、支給日在籍規定は有効か?

労働判例

年2回、6月・12月に支給する旨の条項及び在籍要件慣行は、各当月中に支給日が定められた場合には合理性を有するが、支給日が2ヶ月余を経過して定められた場合には、合理性がないとされた事例
(昭和59.8.28 東京高裁判決 ニプロ医工控訴事件判決要旨)
(昭和60.3.12 最高萩第三小法廷判決 ニプロ医工上告事件判決要旨)

 

判決の要点

事件の概要

給与規程18条は、「賞与は年2回6月、12月に支給する。但し都合により時期を変更することができる」旨を定め、従前から毎年2回必ず賞与が支給されてきたが、昭和55年6月期の賞与については、支給日を同年9月13日と労使協定され、支給日の在籍者にのみ支給する旨の慣行及び労使の合意により、同年7月12日から同年9月3日の間に退職した従業員には支給日不在籍を理由に支給されなかった。

 

そこで、訴求した原告らが第一審で敗訴したため、21名が控訴した事案である。
(以下の判示要旨は、末項を除いて高裁の判示である。)

 

被告会社の主張事実・・・支給日在籍慣行の存在

1.被告会社は、本件賞与について、賞与支給日在籍者にのみ支給する旨の従前からの慣行に従い、支給日の昭和55年9月13日在籍者を支給対象者と定めたものであって、原告らは該当しないと主張し、原告らはこれを争うので判断する。

 

2.被告会社では従前から毎年2回必ず賞与が支給されてきたこと、本件賞与の支給対象者については、支給日の昭和55年9月13日に在籍する者と定められたことは当事者問に争いがない。

 

この事実と証拠を総合すると、被告会社では従前から賞与は年2回6月、12月に支給するものとし、当該支給日に在籍する従業員にのみ支給する旨の慣行が存在していることが認められる。

 

従前の支給日の状況と本件支給日在籍慣行の有効範囲

1.被告会社の従前の賞与の支給状況は、
@昭和52年度 夏期賞与6月29日 冬期賞与12月10日
A昭和53年度 夏期賞与6月30日 冬期賞与12月8日
B昭和54年度 夏期賞与6月30目 冬期賞与12月10日
がそれぞれ支給日として指定され、各支給日に在籍する者にのみ支給され、各支給日前に退職して当日在籍しない者には、当期の賞与を支給しない取扱いであり、各支給月を2ヶ月以上も遅延して支給された例は全くなかったこと、本件賞与についても当初組合は6月20日を支給日として要求し、被告会社と交渉していたことが認められる。

 

2.してみると、賞与は支給日に在籍する者にのみ支給する旨の被告会社における慣行は、賞与の支給時期として、前記給与規程に定められ労使間で諒承されていた6月又は12月について、当月中の日をもって支給日が定められた場合には、当該支給日に在籍しない者には賞与を支給しないとする趣旨の内容のものであり、かつ、この内容の限度において合理性を有するものと解するのが相当である。

 

「但し都合により時期を変更できる」旨の解釈運用と本件2ヶ月遅延に対する不適用

1.前記給与規程の但し書きには、「但し都合により時期を変更することがある。」旨の定めがあるが、この但し書きの趣旨は、上述に判示した内容の慣行を前提とした上で、資金調達の困難、労使交渉の未妥結等の特別の事情が生じた場合を考慮して、毎年6月、12月とした支給時期について、これを合理的な範囲で変更し得ることを例外的に認めたものとみるべきであるから、支給時期の変更に伴い、当然に支給対象者の範囲に変更を生じ、当該支給日在籍者を支給対象とする旨の被告会社主張のような慣行が適用されるものではないと解するのが相当である。

 

2.したがって、本件のように本来6月期に支給すべき賞与の支給日が2ヶ月以上も遅延して定められ、かつ、その遅延について宥恕すべき特段の事情のない(この点は全証拠によるも認められない。)場合についてまでも、支給日在籍者をもって支給対象者とすべき合理的理由は認められない。

 

組合との支給日在籍者を支給対象者とする旨の合意の効力

昭和55年9月5日本件協定書により、被告会社と組合の間において本件賞与の支給日を同月13日とし、当該支給日の在籍者を支給対象者とする旨の合意が成立したとしても、当該合意は、前判示のような当該賞与支給月中の日をもって支給日が定められた場合には、当該支給日の在籍者をもって支給対象者とする旨の慣行に反するものであると同時に、原告らの賞与を受給する権利を一方的に奪うものであるから、原告らの同意がない限り、少なくとも本件賞与を支給日在籍者にのみ支給する旨の合意の効力は、原告らには及ばないというべきである。

 

そして、上述合意の当時、すでに原告らは被告会社を退職して組合に属していなかったものであり、支給日在籍者支給の合意の効力は原告らには及ばないものというべきである。

 

以上の次第で、原告らはいずれも本件賞与を受給する権利を有する。

 

最高裁の判決

1.本件上告を棄却する。
2.上告会社所論の点に関する原審の判断は、原審の適法に確定した事実関係の下において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
(裁判官全員一致)


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