労働判例〜賃金や賞与、退職金

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営業妨害行為に基づく損害賠償債権と退職金との相殺は有効と認められるのか?

労働判例

労働基準法24条1項は、賃金債権に対する使用者の債権による相殺を禁止する趣旨を包含し、その債権が不法行為を原因としたものであっても変わりはないとして、相殺が否定された事例
(昭和59.7.25 大阪地裁判決 N高圧瓦斯工業事件)

 

判決の要点

損害賠償債権の発生及び相殺に関する当事者の主張

1.被告会社は、次のとおり、原告らの不法行為により合計440万6,000円の損害を被ったとして、昭和59年4月18日の本件口頭弁論期日において、上述損害賠償債権440万6,000円をもって原告らの本訴債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。

 

すなわち、原告らは、共謀の上、退職後の昭和58年10月頃から同年12月頃までの間、被告会社の得意先に対して、被告会社が近く倒産し商品が入らなくなる等の虚偽の事実を申し向け、得意先を不安がらせてその発注を減少させ、被告会社は原告らの当該営業妨害行為により3ヶ月間の得べかりし営業利益相当額合計240万6,000円の損害を被り、加えて、当該不法行為により精神的損害を被り、その慰謝料は200万円が相当であるから、被告会社は合計440万6,000円の損害賠償債権を取得した。

 

2.原告らは、被告会社の上述主張に対し、次のとおり否認し争う。

 

原告らの不法行為についての主張事実は否認し、相殺の主張は争う。

 

本件退職金は、労働基準法11条にいう賃金であるから、使用者は労働者に対して有する債権を自働債権として賃金債権と相殺することはできない。

裁判所の判断:損害賠償債権による賃金債権相殺の無効

1.被告会社は、原告らの不法行為により被った損害の損害賠償債権をもって、原告らの退職金債権と相殺する旨主張する。

 

2.ところで、労働基準法24条1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と規定するところ、この規定は、労務の提供をした労働者本人の手に労働の対価である賃金を残りなく確実に帰属させんとする趣旨の規定であるから、労働者の賃金債権に対しては、使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することは許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当であり、このことは、その債権が不法行為を原因としたものであっても変わりはないというべきである。

 

3.しかるところ、原告らの本訴退職金は労働基準法所定の賃金に該当すると解され、被告会社において、原告らに対する損害賠償債権をもって、原告らの退職金債権と相殺することは許されない。


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